深澤直人 x タナカ ノリユキ スペシャルトークショー photo
タナカ:あとは、その間の検証みたいなことをやっていると思うんですよ。例えば、単にカラ自信だとダメなんですよ。やっぱり自信を持ちすぎているっていうのはね。ここまでやって、よくこれ出てきたね、みたいなところまで行く前までの、例えばスケッチにしてもプロトタイプにしても、多分たくさんあると思うんですよね。だからって、それを積み上げてみてもやっぱりダメだったと言ってもう一回ひっくり返してみたらポッと出てきたり。そうすると、よくここまで出てくるなっていうね。自分の頭を絞り出すみたいなことは、たぶん皆さんやっていると思うし、深澤さんとかはたぶんそういうことじゃないかな。自信を持つというのも多分、そういう裏づけがあって成り立つもので、単にカラ自信はダメかな。

深澤:カラ自信は絶対にダメ(笑)。軸がないから。

:自分の中でやはり裏付けとなるものでないと。

深澤:揺れてるってことは軸があるから。あるとき変なほうに振れちゃいけない。揺れを止めて最後の一本を目指すわけだから、ある程度、核心に向かって行ってるということ。それはそんなにパチッとうまく行くわけないんだけど。やっぱり、それを収束していくという、そのプロセスは見えないといけない。

:その、核心となるものの元になっている感覚ってどういうものなんですか。なにかご自分の中のいろいろな幼少体験とか。

深澤:みんなが期待している形ですね。

:みんなが期待している形?

深澤:期待っていうとおかしいな。期待っていうのは分からないんですよね。でも面白いんですよ。だいたいこれだけ商品作っている国だから、作る側はお客さんが一番知っていると思っちゃってるんですよ。だから、できる前に(お客さんに)聞いたりするんですよ。あなたはどんなのが一番欲しいですかって。これからはこういうデザインですよね、みたいに聞くんですよ。すると、聞かれたほうは「分かんない」なんてなかなか強く言えないんですよ。こんなもんかなみたいなことを言っちゃうでしょ。そうすると、それがうその情報になる。それを作ると失敗するんですよ。

タナカ:うん。

深澤:だから、要は、ほとんどの人ができる前は分かっていないんですよ。それを聞くのは酷なんですよ。分かっているかもしれないけれど、聞かれた瞬間には出てこないんですよ。
例えば、この女優はいいなとか、このシンガーはいいなとか、かわいいなとか思っているのを、あるとき急に全然違うところで、あなたの好きな女優は誰ですかって言われると、ちょっと待てよというふうになる感じ。この前思っていたのにって思うんだけど出てこないみたいなところがあって。

:ええ、ありますよね。

深澤:逆に言ったら、そういうこと聞いても全然分かんないのに、こんな感じですかっていいデザインが出たときになると「それだ、それだ」って言うんですよ。その前兆がないにもかかわらず、それだって言えるってことなんですよ。

:ああ。

深澤:だから、ある程度これを出しているエレメントっていうのは、全部実在してたっていう現実感が来ないと、絶対うそっぽくなるんです。ちょっと難しいですけれど。

:どこかでは触れてて、どこかでは感じているものがまずあるということですか。

深澤:それはものすごい破片なんですよ。全ての生活の中にある破片なんです。

:破片なんですね。

深澤:その一個でもうそがあると、完成しないんです。それは、その一個は体験していなくてもほかの破片から導き出されてくるように予測はできるんですけどね。ちょっと難しくなってきたな(笑)。

:すごいことが深澤さんの脳の中では起きてるんですね(笑)。


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